ここ数年、フリーランスという働き方がもてはやされています。「フリーランスは自由でよさそう」と感じている方は、非常に多いのではないでしょうか。
しかし実際にフリーランスは、自由に働けるのでしょうか?今回は、フリーランスを対象としたアンケート調査をもとに、2016年からフリーランスのライターとして活動している筆者が「フリーランスと自由」について考察します。
フリーランスの働き方に関するアンケート

今回は、ITプロパートナーズがフリーランス57人を対象に調査したアンケートを活用します。内訳は、エンジニア9割で、その他にマーケターやデザイナー、コンサルタントなどが回答しています。
フリーランスになった理由
まずは、フリーランスに対する働き方のアンケートをご紹介します。「フリーランスとして独立した理由はなんですか?(複数選択可)」という質問に対しなんと84.2%もの方が「働き方の自由度を求めて」と回答しました。以降「収入アップを求めて」が66.7%、「ライフワークバランスをよくするため」が42.1%、「起業への足掛かりとして」が31.6%という結果です。その他の回答はすべて2%を切っていることから、これら4つがフリーランスになった理由のほぼすべてだと言えます。
「働き方の自由度を求めて」はまさしく「フリーランス=自由」というイメージを地でいく回答ですが、「ライフワークバランスをよくするため」もこれに近い要素があるのではないでしょうか。「ライフワークバランスをよくする」を目指しているということは、現時点でバランスが崩れていると考えられます。休みが多くて困っている方より長時間労働や休日の少なさに悩んでいる方の方が多いと予想されるため、言ってみれば「もっと自由に休みを取りたい」という思いを持つ人も少なくないでしょう。
フリーランスになった目的の達成度
様々な理由をもとにフリーランスになったはいいのの、実際に思った通りの働き方ができているのでしょうか。「フリーランスとして独立した目的は果たせていますか?」という質問については、「十分果たせているが52.6%、「どちらかというと果たせている」が40.4%、「どちらかというと果たせていない」が5.3%、「全く果たせていない」が1.8%という結果になりました。
全体の9割以上が、多かれ少なかれ目的を達成しています。つまり、「フリーランスになって自由な働き方をしたい」という多くの方の思いは、実現しているようです。
フリーランスになって感じる不満点
アンケートに回答したフリーランスの方は、自由な働き方を手に入れたはよいものの、別の観点から不満を抱えているようです。「フリーランスになって不満な点はなんですか?」という質問には、「契約が切られる不安感」「いつまでエンジニアとして働けるのかという先行きの不安感」「怪我や体調不良になったときへの不安感」「健康保険料が高いこと」「社会的信用が低いこと」「人脈の構築に苦労していること」「事務手続きが面倒なこと」という回答が寄せられています。自由を手に入れたフリーランスも、それぞれ悩みを持っているようです。
フリーランスは果たして「自由」なのか?

ここまでアンケートの内容を紹介してきました。ここからは現在フリーランス歴7年の筆者が自由について考察します。
代償を払ったうえで自由であることは確か
結論から言うと、フリーランスが自由であることは確かです。私自身、毎日何時に起きるのか、どこで仕事をするのか、どんな案件を引き受けるのか、100%自分の裁量で決めています。誰に指図されることなく、「今日は遅くまで飲んでしまったから、明日は昼まで寝ていよう」ということも可能です。
気分がのればオフィスライクな服を着てコワーキングスペースに繰り出しますし、気分が乗らなければ一日中自宅でパジャマで原稿を書いています。映画やイベントなどの娯楽を、人ごみの少ない平日に楽しむことも日常茶飯事です。また、対面での取材がなければどこにいても働けるので、毎年冬には1か月ほど沖縄に滞在しながらワーケーションを謳歌しています。
ただしこれは、多くの代償を払った上になりたっている自由です。アンケート結果にも、フリーランスになって感じた様々な不満点が列挙されていました。こういったデメリットをとってでも自由に働きたいかは、個人によって判断がわかれるところではないでしょうか。
私自身、様々なデメリットを身をもって感じています。例えば、フリーランスは会社員と比べて社会的信用がないので、賃貸物件が借りにくいです。過去に、家賃の4倍の収入があり、向こう1年半分の家賃をキャッシュですぐに払える貯金額の証明をしたうえで、「フリーランスだから」という理由で審査に落ちた経験があります。賃貸だけでなく、銀行からの借り入れが難しくなるため、物件の購入のハードルも高いです。
また、将来の保証があまりにも手薄です。フリーランスは第1号被保険者という区分になり、65歳からもらえる年金の額は約5万6,000万円。持ち家があって物価の安いエリアに住んでいたとしても、毎月たったこれだけのお金で生きていくのは簡単ではないでしょう。ましてや、前述の通りフリーランスは物件の購入がしにくいので、このときまでに手元に終の棲家があるかもわかりません。一方、会社員であれば年金受給額は約15万円まで上がります。
心配なのは、なにも遠い未来だけではありません。フリーランスはいつでも、目の前の仕事が切れる恐怖と戦っています。詳細は割愛しますが、日本の法律上、企業はそう簡単に会社員をクビにすることはできないようになっています。しかしフリーランスは企業と雇用契約を結んでいるわけではないため、「君、明日から来なくていいよ」という映画のようなセリフを告げられたとしても、受け入れるしかない場合がほとんどです。会社員であれば失業保険をもらいながら再就職に向けて活動できますが、フリーランスは失業保険がもらえません。つまり、フリーランスでいる間は常に「翌月からの収入がゼロになるかもしれない」というリスクを抱えて生きていくことになります。
「自分にとって」フリーランスのデメリットは自由さと釣り合うのか
仕事は恋愛に例えられることがよくあります。気が合って、優しくて、見た目がよく、お金も持っていて、浮気をせず、趣味もあって、何も言わずとも以心伝心で気持ちが伝わる……そんな「すべてがぴったり」という相手と出会う可能性は、ゼロではないかもしれません。しかしそんな完璧の相手を探している間も自分の人生は進み、結局は生涯一人きりとなることも。そのためほとんどの場合、「趣味はまったくあわないけど、一緒にいると楽しいから」など判断して、恋愛なり結婚なりをしています。
フリーランスになるかどうかも、これと同じです。働き方が自由で、高い収入を得られ、社会的信用もあり……という状態は得られません。「将来の不安はぬぐえないけど、毎日自由に働けるから」といったように判断できるかどうかが、フリーランスとして生活していけるかどうかの境目ではないでしょうか。仕事をするうえで、人生を生きるうえで、何を大切にするかは個人の価値観によります。自由さなどのフリーランスのメリットが、「自分にとって」デメリットと釣り合うかどうかを吟味したうえで、もしメリットを感じればぜひフリーランスに転向してみてください。
自由を謳歌するフリーランスになるためには

フリーランスが自由であることは確かですが、最初から最後までずっと自由というわけではありません。なってみたはいいものの案件が獲得できず、自由に働くどころか生活が成り立たないというケースもあります。常に自由を楽しむフリーランスでいるためには、以下の4つがポイントです。
長期案件を獲得する
短期的なプロジェクト単位で参加する案件だけでなく、中長期での契約を前提とした案件を獲得しましょう。短期的なものばかりだとプロジェクトが終わるごとに収入のあてがなくなり、その都度営業をしなくてはなりません。フリーランスのほとんどは常に複数の案件を請け負っていますが、業務をこなしながら営業をかけることは、非常に手間がかかります。そこでなるべく長期の案件をいくつか持っておきましょう。年単位の仕事が複数あると収入が安定します。
常にスキルアップする
フリーランスは基本的に、できる仕事しか引き受けられません。企業からすればわざわざ外注費を払うにもかかわらず「この人の成長のためにチャレンジングな案件を任せてみよう」とリスクを取る必要がないためです。つまり、「勉強しながら頑張ってみます」というような案件の引き受け方はできません。会社員であれば難しい案件にアサインしてもらったり、資格取得のための教材費を会社が出してくれたりしますが、フリーランスは一人でスキルアップする必要があります。
だからこそ、そのためのコストを惜しまないことが大切です。今より一歩レベルアップした案件を引き受けるためには、まず書籍や動画などを使って自分で勉強します。そして未経験でも引き受けられる単体の案件を獲得し、少しずつ経験を積んでいかなくてはなりません。
具体的な例を出すと、ライターの場合、取材記事をメインで引き受けていた方がいきなりSEOライティングのプロとして案件を引き受けることはできません。まずは「SEOとは」という基本から勉強し、初心者でもOKのSEOライティング案件を引き受け、スキルアップしていくうちにプロのSEOライターになります。その先には、例えばSEOマーケターやディレクターといったキャリアアップの可能性がります。しかし最初の一歩目は、自腹を切ってSEOライティングのセミナーに参加したり、本を買って勉強したりしなくてはなりません。
常に新しい案件を探す
案件ごとのボリュームや個人の処理能力によって、どのくらいの仕事を請け負うかは様々です。すでに手一杯となっている方も、新規案件のチェックだけは欠かさず続けることがおすすめ。常に案件をチェックすることによって、今どんなジャンルの仕事がよく出ているのか、どんな案件にどのくらいの報酬が払われているのかなど、最新の情報をアップデートできます。もし手持ちの仕事を切られてしまったとしても、こういった情報を持っていれば次にどんな案件を探せばいいかの指針になります。
場合によっては、今ある仕事を終わらせて次の案件に移ることも可能です。フリーランスにおいては現状維持はそのまま衰退を意味するので、週に1回1時間だけでも案件探しの時間をとりましょう。
仕事の種類を増やす
最近では、リスキリングにチャレンジする方が増えています。リスキリングとは、仕事に活かすため何か新しいスキルを身につけることで、今ある仕事の延長線上ではなくてまったく触れたことのない分野を学ぶことを指しています。詳しくは、「リスキリングで何を身につける?人気のスキル 8選」をご覧ください。フリーランスの方は、リスキリングの重要性が高いです。一つのジャンルに依存していると、それがダメになったときに身動きが取れなくなります。
例えば私の場合、2017年からライターと並行して司会の仕事を引き受けていました。結婚式や展示会、企業パーティ、自治体イベントなど様々な現場に出て、進行をする仕事です。収入の割合として全体の3割くらいを司会の仕事が占めていましたが、コロナ禍に突入するとともにほぼゼロに。自分には何の落ち度もないにもかかわらず、社会情勢の変化というまったくコントロール外の理由で収入が絶たれました。
もし司会一本で生計を立てていたら、とても大変なことになっていたでしょう。しかしライターの案件はコロナ禍でも需要があったため、生活していけました。もしが司会だけをしていたとしても、コロナ禍になってライターを目指し、収入を得ることは可能だったかもしれません。しかしゼロからスタートして食べていけるような収入を得るようになるには、長い時間がかかります。つまり、常に複数の種類の仕事をしておくことがリスクマネジメントにおいて重要です。
先を見すえた資金計画を立てる
前述の通り、フリーランスは何もしなければ将来的にもらえるお金は非常に少ないです。そのため、自分自身でお金について学び、準備を整えなくてはなりません。たとえば中小企業基盤整備機構には、「小規模企業共済」という仕組みがあります。
(引用:中小機構小規模企業共済)
小規模企業の経営者や役員の方が、廃業や退職時の生活資金などのために積み立てる「小規模企業共済制度」。掛金が全額所得控除できるなどの税制メリットに加え、事業資金の借入れもできる、おトクで安心な小規模企業の経営者のための「退職金制度」です。
つまり、本来はフリーランスがもらえないはずの退職金をもらうため、早いうちからお金を貯めておくものです。単なる貯金と異なり、ここで払う掛け金が所得控除対象となり、節税につながります。
他にも、保険料が節約になる方法などフリーランスのためのお金についての知識は数多くあります。これらをしっかりリサーチして、将来的に困らないよう先を見すえた資金計画を立てておきましょう。
これからフリーランスを目指す方のためのポイント

現在フリーランスになろうか悩んでいる方のため、いくつかのポイントを解説します。
自分にフリーランスが向いているか自己分析する
前述の通り、フリーランスが向いているかどうかは個人の価値観によります。自由さよりも安定を求めるなら会社員の方がよいですし、リスクがあってもすべての裁量権を自分で持ちたい方にはフリーランスが向いています。まずは自己分析をして、本当に自分にフリーランスが向いているか考えてみましょう。
私も身近な方に「フリーランスになりたいと思っている」と相談を受けることがありますが、その時に判断基準の一つとして話しているのが、「小学生のころ、夏休みの宿題をいつ終わらせていたか」です。私はお盆のあたりには8割を終わらせのんびりと始業式を迎えるタイプでした。こういったタイプの方は、比較的フリーランスが向いていると感じます。
一方で、8月下旬になって慌てて手を付けていたタイプの方は大変です。フリーランスは仕事の進捗管理をしてくれる人間がいないため、常に自分でスケジュールを立てて計画的に動かなくてはなりません。面倒なことを先送りにするタイプの方は、あっというまに締め切りが重なり毎日が8月31日のような日々を過ごすことになります。そういったバタバタした状況を楽しめるのであれば、問題ありません。しかし、計画的に物事を進めることができず、そのつけが回った状態にストレスを感じてしまうなら、あまり向いているとは言えないでしょう。
突然フリーランスにならず副業から始める
7年前に比べると、現在は非常にフリーランスになりやすいと感じます。クラウドソーシングサービスが興隆を極め、未経験の方も簡単に業務委託の案件にチャレンジできるためです。だからこそ、突然会社を辞めてフリーランスに転向するのではなく、まずは副業から始めてみてください。
また、本業のスキルを伸ばして独立するというのも王道の方法です。会社を最大限活用し、身分を保証された状態でスキルを伸ばします。そこで得たノウハウを持ってフリーランスに転向すれば、最初からスムーズなスタートを切ることが可能です。
自分の過去を振り返ると、新卒で入社した会社を3か月で辞め、「コネ・カネ・スキルなし」の状態で無謀にも突然フリーランスになったため非常に苦労しました。当時は現在ほどクラウドソーシングが活用されておらず、未経験の案件を見つけるのも簡単ではありませんでした。翌月の家賃も払えるか心配という状態が続いたため、これからフリーランスになる方には「コネ・カネ・スキル」のせめて一つでも手に入れた状態での独立をおすすめします。
頼れるフリーランスの先輩を見つける
こちらも、私自身の経験から感じているポイントです。今でこそフリーランスという言葉が浸透していますが、2016年当時はまだそこまで広く知られておらず、フリーターとの違いもわかっていない方も多くいました。自分の周りにも一人もフリーランスがおらず、すべての知識をネットから得るしかありませんでした。
しかしネットの情報は常に玉石混交です。事実とは全く異なる内容を信じてしまった経験もあります。そのため、これからフリーランスになる方はまず身近にすでにフリーランスとして活動している方がいないか調べてみてください。もしいれば、その方に案件の探し方や税金のついてなど、わからないことを質問してみましょう。
もしいなかった場合、どのように情報を獲得するかについて慎重になりましょう。省庁や自治体のHPなどは信頼性が高いですが、一般的なウェブサイトは誤った情報がのっているこもあります。
最も気を付けなくてはならないのが、SNSからの情報です。特にフリーランス関連の投稿をしているアカウントは、情報商材を売ることも目的としているものも多いです。もっと悪い場合、悪質な詐欺の被害に遭う可能性もあります。どのプラットフォームを活用するにしても、常に「これは真実か?」と一度疑うようにするとリスクを低減できるでしょう。
まとめ
会社員にもフリーランスにも、それぞれメリット・デメリットがあります。どちらが優れているということはなく、大切なのは自分にとって向いているのはどちらかということです。
今回の記事ではフリーランスのリスクを多数挙げましたが、私自身はフリーランスの方が合っていると感じています。もしこれからフリーランスになる方がいるのであれば、正しくデメリットを認識したうえで、しっかりメリットを享受できるよう頑張ってください。


