今までの日本は会社に雇用されて定年まで働くという働き方が主流でしたが、働き方が多様化した今、起業ブームが巻き起こっています。
起業というと特別な一握りの人しかできないもの、と思われがちですが、誰にでもそのチャンスはあるのです。
今回の記事では、起業家になるために必要なスキルと方法をご紹介します。
起業家とは
「なりわい(業)を起こす」という文字の通り、起業家とは自分のアイデアや理想のために新しいビジネスを始める人たちのことを言います。
起業家は一からビジネスを始めるので、ヒト、モノ、カネなど経営資源の有無が起業に大きな影響を及ぼします。「経営資源が少ない」という課題をクリアするために他の起業家とチームを組んだり、すでにある企業と連携したりすることも。
どのような形で起業するかも様々で、個人事業主、株式会社、合同会社、一般社団法人、NPOなど自分が興したいビジネスを実現するのに最適なものが選ばれるのです。

学歴や資格は必須ではない
2000年代に起業を成功させた有名企業経営者の経歴を見ていくと東京大学、京都大学、早稲田大学、慶應義塾大学、上智大学、一橋大学などがズラリと並びます。
短期間で急成長する企業経営者には高学歴者が多いのは事実ですが、学歴を問わず活躍している起業家も少なくありません。
- ECサイト大手 「DMM.com」 亀山会長兼CEO:平均レベルの公立高校卒業
- 大手通信企業 「GMOインターネット株式会社」の創業者 熊谷会長:高校中退
- レンタルサーバー「ロリポップ」運営 「株式会社paperboy&co.(現GMOペパボ株式会社)」の創業者 家入一真:高校中退
他にもZOZOTOWNの元社長である前澤友作さんや牛丼チェーン吉野家の河村社長など、たくさんの起業家が、学歴に関係なく成功しています。
また、起業における「成功」は有名企業に成長することだけではありません。起業にはさまざまな形があり、ボランティアなど社会福祉を目的にしたものも少なくないからです。
ゴールに対して学歴のメリットがあることもあれば、全く関係ないこともあります。
同様に資格も必須ではありません。
勉強をし続ける姿勢や、スキルアップのために取得することは起業するにあたりプラスになりますが、「何の資格も持っていないから起業なんてできない…」などと悲観的になる必要はありません。
資格が無くても、スキルを活かせるビジネスはたくさんあるからです。
ただし、弁護士や人材派遣業、不動産業など一定の業種は開業に資格が必要になりますので事前に下調べをしましょう。
起業家の収入はどれぐらい?
働き方や業種によって異なりますが、日本政策金融公庫総合研究所の調査によると起業家の約48%が月商50万円未満、約16%が月商50~100万円未満という結果になっています。
少ないと感じる方もいるかもしれませんが、全体の約71%は黒字基調という回答ですので、利益をしっかりと出せている人が多い印象です。
また、売上状況についても「増加傾向」と答えた人は約35%おり、「横ばい」の約48%を足すと80%以上の起業家は現状維持以上の成果を出しているのです。
出典:日本政策金融公庫総合研究所「2021年度起業と起業意識に関する調査」
起業家と似た言葉
日本語には「起業家」と似たような言葉がいくつかあります。大枠では意味は同じようなものが多いので、混同して使われがちです。
今一度、違いを見ていきましょう。

実業家との違い
実業家は商業、工業、金融など経済的な事業を営む人という意味です。
起業家と違って自らビジネスを起こす必要はなく、「営んでいる」という点がポイントです。ビジネスパーソンとも言い、場合によっては「ビジネスで成功し、さらに今も活動し続けている人」という意味で使われることもあります。
経営者との違い
経営者とは、会社などを管理運営する権限と責任を負っている人のことです。
範囲は幅広く、起業家や企業家、実業家も経営者に含まれています。
従来の日本では「経営者=創業者、後継者、雇われ社長である」という感覚が強くありました。
しかし、情報や技術の高度化によって経営も複雑化しています。そこで経営の専門教育を受けた人を経営者と呼ぶ傾向も強くなっているのです。
起業家の魅力とは
日本でここまで起業がブームになっている理由は何でしょうか。
そこには会社に雇用されているだけでは得ることのできない魅力があるからです。

社会をより良くできる
日常生活において、「欲しい」「困っている」「もっと良くなればいいのに」と感じるものはありますよね。そんな問題を解決するのが起業です。
スマートフォンのように社会全体の在り方すら変えてしまうものから、地域コミュニティの慢性的な課題に取り組むものまで形はさまざま。
起業の魅力は問題解決だけではなく、経済活動や雇用を通じて社会を活性化させる役割も担っている点にあるのです。
逆に言えば社会に悪影響を及ぼすようなビジネスは、最初はうまくいっても後々綻びが出るでしょう。
アイデアを実現できる
会社員として働いていると、自分のアイデアがあっても会社の規則や業務に縛られてしまい実現しにくいですよね。
起業することにより、アイデアを実現しやすい環境を整えられます。
今まで見落とされていたマーケットにアプローチできれば、シェアを独り占めできる可能性も。雇用されていない分資金繰りや自己管理能力はより必要になりますが、自由な発想で自由に動くことができるでしょう。
自分の強みを活かすことができる
日本では、社内の部署を数年おきに異動しながら様々な経験を積んでいく「ジョブ・ローテーション」という運用が大企業を中心に行われてきました。
技術職希望で入社した人が総務部や購買部で働くということは珍しくなく、経験が積める一方で不向きな仕事をこなすストレスもあります。
一方、起業家は自分の好きな仕事に全力を注ぐことができます。最終的な判断を自らすることになるので、「やる・やらない」を即時決定できるなど自由度の高さも魅力です。
起業家になるリスクとは
魅力がたくさんある起業ですが、もちろんリスクも付きまといます。
ここでは3つのリスクを紹介しますので、魅力と併せて比較してみましょう。
資産を失うリスク
金融機関などから借入をしたものの、販売経路が確率できなかった、顧客が獲得できなかったなど想定した利益を出すことができないこともあります。そのまま撤退や倒産となると借金はそのまま残ってしまうことになります。
キャリアを失うリスク
日本では約半数が転職した経験がないと言われています。厚生労働省の調査では「転職者がいる事業所」は全体で33%となっています。30人~299人の規模に限定すると約52%~70%と上昇しますが、約半数弱が入社してから勤務し続けていることになります。
転職は当たり前という風潮になってきましたが、実態はそこまで多くありません。
起業家の場合、起業したことがプラスに働くケースもありますが、転職活動において元社長や自営業者は避けられることが少なくありません。もし起業が上手くいかなかった場合、築いてきたキャリアを活かしにくい可能性があるのです。
信用を失うリスク
アメリカなど起業が盛んな地域では起業失敗や破産はポジティブに捉えられます。チャレンジを讃えるだけでなく、ノウハウを学んだ存在として位置づけられるからです。元アメリカ大統領のドナルド・トランプはカジノやホテル経営に失敗し、4~6回破産しています。あくまで会社とはビジネス手段の1つで、上手く行かなければ撤退すれば良いという発想もあるからです。
しかし、日本では旧来から「会社=家」のような捉え方があり、倒産させた経営者には社会的にもネガティブな印象が強く植え付けられてしまいます。とくに金融機関からの信用は大きく低下し、再度挑戦したくても融資をしてくれないことが多いでしょう。
起業家が身につけたいスキルとは?
起業には学歴も資格も必須ではないとお伝えしましたが、身につけておいた方がよいスキルもあります。
どんなスキルがあるのか見ていきましょう。

発想力
起業するためにはアイデアを思いつかなければなりません。常に情報を取り入れ、問題意識を持ち、ビジネスに結び付くかを考えましょう。その際、自分・顧客・社会の3者が利益を得られるビジネスであるかが重要です。
まったく新しいアイデアほど大きく成長する可能性を秘めていますが、成功確率は低くなってしまいます。
すでにあるマーケットでも製品の組み合わせ方や販売ルートによって新しい商品・サービスになりえるのです。
アイデアを生み出すにはまずは大量のインプットが重要。
インターネットは便利ですが、自分の検索履歴やアクセス先を元に表示される仕組みがあるため、引き出しは広がりにくいかもしれません。図書館、書店、新聞(パーソナライズされないもの)、テレビなどから取り込むようにしましょう。
また、自分とは違う経歴や考えを持つ人と関わるのも大切です。SNSを利用して交流するときはエコーチェンバー現象に注意しましょう。エコーチェンバー現象とはSNSなどで考えを発信すると自分の価値観に近い意見が増幅する状況のことを言い、多様な意見を取り入れている「つもり」になってしまうことがあるのです。
大学、ビジネススクール、起業塾など発想力を鍛えるトレーニングを行っているところもあります。また、経済学者であるシュンペーターの「イノベーション理論」など経営学書から学ぶのもよいでしょう。
技術力・専門技能
ビジネスにはコア(核)となる要素があります。コアは流通力、ブランド力などさまざまで成長のキーとなるのです。
小規模の起業では起業家本人の技術力や技能が成果に直結します。プログラミング知識、金融商品の扱い、機械設計など一長一短には身につけることができないものほど価値を持つでしょう。
マーケティング
製品・サービスが売れる仕組みをつくるために行うのがマーケティングです。マーケティングは顧客のニーズを分析して、どのマーケットのどの部分にアプローチするかを考え、適切な方法を選択することをいいます。マーケティングにより自然に製品・サービスが売れることが理想的です。
マーケティングが生まれる前に行われていたのはセールスです。昭和の時代では訪問販売や飛び込み営業など、積極的に潜在顧客にアプローチしていましたが、効率的ではないだけでなく「押し売り」「迷惑販売」と社会問題にもなりました。
マーケティングは日々さまざまな理論が生まれています。まずはフィリップ・コトラー、マイケル・ポーター、ランチェスター、ドラッカーなど著名な学者の書籍から基本知識を学びましょう。今ではWEBマーケティングも盛んです。SNS、オウンドメディア、SEO対策などの知識を学ぶのも重要です。
プレゼンテーション
自分の商品・サービスがどんなもので、いかに優れているかを説明するためにはプレゼンテーションのスキルが必要です。プレゼンテーションは顧客だけではなく、金融機関などさまざまな場面で行われます。
プレゼンテーションは情報が多ければよいわけではありません。相手に提案する場面ではテーマやデータが多いと分かりづらくなってしまいます。
分かりやすい資料作り、理解しやすい文章、相手に伝わる話し方が求められるでしょう。
ITスキル
プログラミングなど高度な知識ではなく、ビジネスで一般的に必要とされるレベルのITスキルです。Microsoft-Office(Excel、Word、PowerPoint)、クラウドサービス、Zoomなどオンライン会議サービスを使えるようにしておくと役に立ちます。
会計・税金知識
個人事業主でも株式会社でも、会計知識は求められます。
貸借対照表や損益計算書の見方が分からなければ、資産や借金がどれぐらいあり、儲けが出ているか分かりません。日商簿記検定3級程度の知識はあるとよいでしょう。
お金の流れを把握する資金繰りやキャッシュフロー計算書も重要です。
資金繰りは将来の予想をするもので、キャッシュフローは過去のお金の流れを分析します。お金の流れを把握していないと「勘定合って銭足らず」という言葉があるように、帳簿上では黒字なのに手元に現金が無くて倒産…なんてこともあるのです。
税金の知識は膨大で毎年変更があります。どんな税金があり必要な手続きは何か、基本的な枠組みをしっかりチェックしましょう。税金を上手く味方につけないと余計な税金を払うことになってしまいますよ。
人脈の作り方
起業はさまざまな人の力を借りるのがコツです。人脈が広がれば貴重な情報、アドバイスを得ることができます。場合によっては仕事を斡旋して貰えることもあるかもしれません。
自分が目指す方向性で成功している起業家にコンタクトをとって話を聞く人もいます。
ただし、人脈の作り方は人それぞれです。
大学OBなどで構成される組織や地域商業団体などのネットワークを利用し、実際に会うことで人間関係を広げていくのもよいでしょう。
業種によってはSNSやオンラインサロンを通じて出会う方法もあります。
不安のコントール
自信がありそうに見える起業家も常に不安を感じています。
見通しの不透明さから来る不安を完全に消しされる人はいないと言ってよいでしょう。
宗教、占いなど精神的な拠り所を持つ起業家は少なくありません。
依存しすぎることはよくありませんが、メンター(相談役)を見つけたり心理学など精神をコントロールする方法を身につけることはプラスになります。
起業家に求められるマインドとは?
スキルと同時に必要なのが、「マインド」です。心の持ちようで、ビジネスの方向性が左右されることもあるからです。
根性論ですべてうまくいくわけではありませんが、ここでは精神面で求められるスキルを紹介します。

行動力・決断力
優れたアイデアであっても思っているだけでは駄目ですよね。実際に行動しなければ何も生み出すことはできません。
しっかりとしたマーケティングや計画は大切ではありますが、行動しないと分からないことも多いのです。
ビジネスは常に変化をしています。関係者の思惑で上手くいかなかったり、イレギュラーな事態が起きたりすることもあります。そんなときに適切なタイミングで決断をできるかも起業家には求められるのです。
使命感がある
起業家には「撤退」という選択肢もあります。起業してもなかなか成果が出ないことは普通です。頭で分かっていても増える損失に耐えるのは並大抵のことではありません。
さらに失敗や恥をかいたりすることもあります。そんな辛く逆境の中でも使命感や信念があれば、粘り強く努力を続けることができるでしょう。
自己マネジメント力
誰の目がないとやる気が出ず、ついサボってしまう人は起業家には向いていないかもしれません。起業家は自ら学び、計画を立てて、行動して責任を負います。改善する方法やアイデアを探し、色々な人に出会うように自分を律するのです。
それは自分の健康にも言えること。病院のリハビリテーションでは会社員よりも起業家など経営者のほうが率先してリハビリに取り組むことが多いと言います。
自分のモチベーションをコントロールし、常に仕事に取り組めるかも起業家には求められます。
集中力がある
設立から数年間は休んだことはなかったという起業家は少なくありません。ゼロからビジネスモデルを作り上げるまでには途方もない努力が必要です。アイデアが自分の好きなことであれば集中し続けられるかもしれませんが、ときには関心のないことにも取り組まなければなりません。それでも集中力を維持し続けられる人は起業家に向いているでしょう。
スピード感
経営者は一般的にせっかちだと言われています。スピード感がないと経営資源が使われていき、わずかなチャンスを得ることはできないからです。
時間は使わなければあっという間に過ぎ去ってしまいます。フットワークの軽さは起業家の強みの1つ。時間を効率的に使えることを意識できなければ起業家には向きません。
本業で起業するか、副業で起業するか
いよいよ起業しようと決めたら、どんな形態から始めるかを考えましょう。
起業形態を「本業」と「副業」に分けて、それぞれ見ていきます。

本業としてスタートする場合
一般的には会社員を辞めて起業するパターン多いでしょう。「脱サラ」とも言われることもあります。全ての時間を注ぎ込むことができるメリットがある一方で、資産・キャリア・信用を失うリスクも背負うことになります。
スキルを持った友人や以前からの取引先など、起業した時に周りからの支援を得られるよう、根回しをしておくとよいでしょう。
副業からスタートする
副業から徐々に成長させていく起業方法です。
生活するのに必要な収入を得ながら仕事ができるので、仮に失敗してもリスクは限定的と言えるでしょう。会社員として得られるスキルと、副業で得られるスキルの相乗効果も期待できます。
時間的制約が大きいのは副業からのスタートの特徴です。休日、出勤前、休憩時間、帰宅後の時間を使うことになるので精神的な負担が大きい場合もあります。結果として、思ったような成果を得られなかったり、チャンスを失ったりすることもあります。
起業の流れとは?
起業の形態が決まったら、いよいよ具体的なプランの策定です。
といっても、難しいことはありませんので3つのステップでご紹介します。

1.具体的なプランを立てる
アイデアを元にマーケティングなど調査を行い、事業計画を立てていきます。
目標を設定して、実現するための方法を事業計画として考えていきましょう。
事業計画を立てるときには自分が生活できるかどうかをシミュレートすることも大切です。生活するために必要な金額を得るには、1ヶ月にどれだけ受注をしなければならないのか逆算することで、最低限の目標を導けるでしょう。
2.資金調達する
「先立つ物は金」ということわざがあるように、アイデアを実現するにはお金が必要です。事業計画を立てる中で、必要となる金額は明確になってくるでしょう。
起業までに働いて調達するのか、足りなければ借入れをするのか、投資家から投資して貰うのかなど資金調達の方法はさまざまです。また、利用できる国などの補助金や助成金申請も確認するとよいでしょう。
3.開業・設立の手続きをする
個人事業主として起業するなら開業届を税務署に提出しましょう。
株式会社を設立するのであれば定款作成、出資、法務局に登記する必要があります。
ただし、副業として起業する場合は確定申告をすればよいので、書類を提出する必要はありません。
一般的にビジネスが軌道に乗るまでには3~4年は掛かると言われています。
それまでは思うように成果は上がらなくても想定の範囲内。焦らずビジネスを育てていきましょう。
まとめ
起業というと特別な一握りの人しかできないもの、と思われがちです。
ですが、働き方が多様化した今の日本では誰でも起業家になれるベースが整ってきています。
とはいっても、まだまだ終身雇用のイメージが強く、失敗が許されにくい社会なのも事実。
副業からでも起業はできますので、来るときに向けて準備をし、自分のライフスタイルに合ったビジネスを確立させましょう。

