日常生活や職場などで、困りごとが多い方もいるのではないでしょうか。特に対人関係に問題を抱えることが多い場合は、自閉スペクトラムが原因である可能性も考えられます。
今回の記事では、自閉スペクトラムの特性について詳しく解説します。セルフチェックの方法も紹介しているので、社会で生きづらさを感じている方はぜひ参考にしてください。
自閉スペクトラム症とは

自閉スペクトラム症(ASD:Autism Spectrum Disorder)とは、脳機能の偏りによって生じる発達障害の一つです。人とのコミュニケーションが苦手で、自分の気持ちを伝えたり、相手の気持ちを読み取ったりするのが難しく感じます。
興味や関心の範囲が狭く、こだわりの強い行動が見られるケースも少なくありません。しかし、知的障害を伴わない場合は学業成績に影響が出ないため、幼少期に発症していても周りに気づかれないまま成長する人が多いです。
また、大人の自閉スペクトラム症は、うつ病や不安症などを合併するリスクが高くなります。二次障害は、特性による苦しさや生きづらさが原因です。ただし、周囲の理解や適切なサポートなどによって回避できる場合もあります。
自閉スペクトラム症の診断方法
自閉スペクトラム症の原因はまだ特定されていないため、血液や画像の検査だけで診断することができません。本人の様子や生育歴、病歴、周囲の環境などの情報と統合したうえで診断していきます。
自閉スペクトラム症を診断するためには、検査と面談の実施が不可欠です。検査では、自閉スペクトラム症に関する特性を詳しく質問する「ADI-R(自閉症診断面接)」や、検査者とのやり取りを観察して評定する「ADOS-2(自閉症診断観察検査 第2版)」などを行います。
面談では自分の情報を客観的に伝えられるように、母子手帳や保育ノート、通知表などを持参するのがおすすめです。また、日常生活や職場で困っていることがある場合は、事前にメモしておくとスムーズに進められます。
自閉スペクトラム症の治療法
自閉スペクトラム症は、まだ根本的な治療法がない状態です。ただし、自閉スペクトラム症による症状を和らげる治療法や、困りごとを減らす対処法は存在します。
環境調整
年齢に関わらず、自閉スペクトラム症に有効なのが環境調整です。周囲の人に協力してもらい、日常生活や職場で困りごとが生じにくくなるようにします。
また、自閉スペクトラム症の強みでもある正確性や几帳面さ、興味があることに対する集中力の高さなどを活かせる環境を作ることも大切です。
心理療法
大人の自閉スペクトラム症は、うつや不安症などの二次障害を発症する可能性が高いです。二次障害には認知行動療法が特に有効で、自分の行動や考え方の癖を把握し、整えることで日常生活や職場でのストレスを減らしていきます。
また、人とのコミュニケーションに問題を抱えている場合は、ソーシャルスキルトレーニングで関わり方や振る舞いを学ぶことも可能です。
薬物療法
環境調整や心理療法だけでは改善されない場合は、特定の症状に対して薬物療法を行うことがあります。主な対象は睡眠障害や感覚過敏、うつ病など、自閉スペクトラム症と合併するケースが多い症状です。
自閉スペクトラム症の特性

自閉スペクトラム症の特性によって、生きづらさを感じる人は少なくありません。人によって症状の現れ方は異なりますが、代表的な特性は以下の3つです。
人とのコミュニケーションが苦手
自閉スペクトラム症は、自分の気持ちを伝えたり、相手の気持ちを理解したりすることが苦手です。また、言葉のニュアンスや遠回しな表現も理解できず、特に職場で問題を抱える
ことが多くあります。
その他、社交辞令や冗談が通じないことも自閉スペクトラム症の特性です。自分が使うまたは理解できる言葉はストレートな表現だけです。そのため、思ったことをそのまま伝えて、相手を不愉快にさせてしまうこともあります。
こだわりが強い
自閉スペクトラム症はこだわりが強く、急な変更に対応できない傾向があります。そのため、職場では融通が効かないと思われる場合も多いです。また、興味・関心の範囲が狭く、好きなことを始めると周りが見えなくなります。
感覚(刺激)に対して過敏・鈍麻
感覚過敏とは、音や匂いなどの感覚に対して敏感に反応してしまうことです。反対に、刺激に対しての感覚が鈍いことを感覚鈍麻と言います。自閉スペクトラム症で見られることが多い特性で、過敏・鈍麻になる感覚は人によって異なります。
自閉症スペクトラム症の人が職場で抱えやすい困りごとと対策

自閉症スペクトラム症の特性上、職場で困りごとを抱えてしまう人は少なくありません。下記では、職場で抱えやすい困りごとと対策を紹介します。自分で努力するだけでなく、周囲の人に協力してもらうことも重要です。
報連相が苦手
「報連相をするタイミングが難しい」「報連相の必要性が分からない」などの理由で、報連相が苦手に感じる人もいます。上司などに相談して報連相のタイミングや方法をあらかじめ決めておくと、スムーズに報連相ができるようになる可能性が高いです。
仕事の段取りを上手く立てられない
自閉スペクトラム症の特性として、先を見通して計画を立てられないことがあります。仕事の段取りを上手く立てられない場合は、やるべきことを可視化する方法がおすすめです。付箋などに書き出し、終わったら順番に消していきます。
なお、同時に複数のタスクを進めるのは苦手な傾向があるため避けた方が無難です。仕事の優先順位が分からないときは、上司や先輩などに聞くと良いです。
説明が理解できない
自閉スペクトラム症の人は、目で見る情報よりも耳で聞く情報が理解しやすい、または耳で聞く情報よりも目で見る情報が理解しやすいことが多いです。どちらかが得意で、どちらかが苦手な傾向があります。
耳で聞く方が得意な場合は、説明を録音させてもらう方法がおすすめです。目で見る方が得意な場合は、口頭ではなくメールを活用してもらえるか相談してみましょう。
【大人向け】自閉スペクトラム症のセルフチェック

日常生活や職場で、以下に多く当てはまる場合は自閉スペクトラム症の疑いがあります。
- 相手の気持ちや言葉の裏を察するのが苦手
- その場の空気を読むのが難しい
- 思ったことはそのまま口に出してしまう
- 雑談が苦手
- 指示が曖昧だと理解できない
- 急な変更があると混乱する
- 職場で同じミスを繰り返してしまう
- 「あれ」「それ」などの指示語を理解するのが難しい
- 他者のペースに合わせるのが苦手
- 特定の匂いや音などに対して過敏である
「上記のような困りごとが長く続いている」「改善したくてもできない」「原因は分からないけど上手くいかない」などで悩んでいる場合は、自閉スペクトラム症の傾向があります。その特性によって困りごとが生じているかもしれません。
ただし、セルフチェックはあくまでも参考程度なので、日常生活や職場で困る場面が多い場合は専門機関に相談しましょう。
自閉スペクトラム症の疑いがある場合は専門機関に相談しよう
自閉スペクトラム症は、人とのコミュニケーションが苦手だったり、感覚過敏・鈍麻になったりする発達障害です。知的障害を伴わない場合は、大人になってから診断されることも少なくありません。
また、自閉スペクトラム症の特性から生きづらさを感じ、うつ病や不安症などの二次障害を発症することもあります。ただし、二次障害は本人の努力や周りのサポートによって予防できる場合も多いです。
少しでも自閉スペクトラム症の疑いがあるときは、早めに専門機関へ相談しましょう。自閉スペクトラム症自体の治療法はないものの、症状を和らげたり、困りごとを少なくしたりする方法はあります。

