少子高齢化が進む日本では、労働人口の減少に加えて長時間労働の慢性化が深刻な問題です。さらに、近年ではテレワークや副業など、働き方の多様化も進んでいます。従来とは異なるこれらの労働環境や働き方に対応するため、政府は働き方改革を進めています。働き方改革関連法もその一環で、2018年以降労働にかかわる法律が順次交付・施行されています。
今回は、働き方改革関連法で何が変わるのか、違反時の罰則や企業が対応するべきポイントについて解説します。
働き方改革関連法とはどのような法律?

日本の法律には、労働基準法をはじめとして労働契約法、雇用対策法などの労働にかかわる労働法があります。働き方改革関連法とは、複数の労働法を改正するための法律で、正式名称を「働き方改革を推進するための関係法律整備に関する法律」といいます。2018年に働き方改革関連法案が衆参両院で可決され、2019年より順次法改正が行われています。
働き方改革関連法が必要となった理由
なぜ働き方改革関連法によって労働法の改正に至ったのかというと、そもそもは人口減少による労働力不足解消から始まりました。日本の人口は減少傾向にあり、今後さら更に人口減少が加速することが予測されています。同時に、働く世代も減少が予想される上、日本は他国と比較すると労働生産性が低いことも問題です。
働き方関連法が必要となったのは、今後悪化すると考えられる労働者人口と労働生産性の改善、多様な働き方に対応して労働力を確保するのが、大きな理由です。
働き方改革関連法で変わること・違反時の罰則

働き方改革関連法では、労働にかかわる法律が改正されることとなります。具体的にどのような変更点があるのか、その主な内容と違反時の罰則について解説します。
時間外労働の上限規制
労働基準法では、労働時間を1日8時間、週40時間と定めています。これを超えて働く際は、企業が「36協定」を締結した上で労働監督署へ届け出をしなければなりません。この36協定では、1ヶ月45時間、年360時間の時間外労働が上限となっています。ただし、特別条項付きの36協定を締結した場合で繁忙期や緊急時などは、上限を超えた時間外労働が可能でした。
働き方改革関連法では、36協定の上限が厳格化されます。1ヶ月あたりの労働時間は休日労働を含む100時間未満、2~6ヶ月の労働時間の平均が80時間以内、年720時間以内で、これを超えることは特別条項付き36協定を締結していたとしても違反となります。
違反した際の罰則は、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金です。
年次有給休暇取得の義務化
有給休暇が付与されていても、多忙で取得できず消化しきれなかった経験を持つ方は多いのではないでしょうか。働き方改革関連法では労働基準法が改正され、年10日以上の年次有給休暇を付与されている労働者は年5日の取得が義務化されました。
労働者による時季の指定、労働者からの請求・取得、企業が有給休暇取得日を設定する計画年休のいずれかで、企業は労働者に年5日以上の有給休暇を取得させる必要があります。これにより、最低でも年5日は有給消化ができるようになりました。
違反した場合は、1人あたり30万円以下の罰金が科されます。
フレックスタイム制度の拡充
フレックスタイム制度は、精算期間内で定めた総労働時間の範囲内で労働者が始業時間や終業時間、1日あたりの労働時間を自由に決められる制度です。従来1ヶ月以内と定められていた精算期間が、働き方改革関連法で3ヶ月以内に変更となりました。この変更によって労働者は3ヶ月以内で労働時間を調整できるようになり、より柔軟な働き方が実現しやすくなります。
なお、1ヶ月以上の精算期間を設定する場合は、労働基準監督署への届け出が義務付けられており、違反した場合は6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金となります。
インターバル制度の努力義務化
インターバル制度とは、終業時刻と翌日の始業時刻との間に一定時間以上の休息を確保する制度です。働き改革関連法で、インターバル制度はすべての企業で努力義務となりました。休息時間については特に定められていませんが、インターバル制度ではEU労働時間指令で定められた「24時間につき最低連続11時間の休息時間」を参考にしているため、この時間が目安となります。
客観的な労働時間の把握の義務化
従来、労働時間は労働者が自己申告した時間での管理でしたが、これに加えてタイムカードやパソコンなどを使った打刻、パソコンの使用状況など客観的な方法で労働時間を把握することが義務化されました。この法改正は長時間労働や休憩なしでの労働で労働者の健康が守られないことを懸念したためで、労働安全衛生法の改正で導入されています。
労働時間の記録は最低3年間の保存が必要で、違反が認められた場合は30万円以下の罰金が科されることがあります。
月60時間超の時間外労働の割増賃金率引き上げ
月60時間以上残業をした際に支払われる割増賃金率は、従来大企業のみ50%、中小企業は25%でした。2023年4月からは、長時間労働を減らすことを目的として中小企業の割増賃金率も50%に引き上げられました。
中小企業で新たな割増賃金率での金額を支払わない場合の罰則は、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金となります。
働き方改革関連法の施行に伴い取り組むべきポイント

働き方改革関連法による変更で、これまでの働き方や環境が大きく変わる可能性があります。企業は、これらの変化についてどのように対応すればいいのか、法改正に伴い企業が取り組むべきポイントをご紹介します。
労働時間の見直し・業務効率化
働き方改革関連法では、時間外労働の上限や残業時の割増賃金率の引き上げなど、長時間労働を解消するための変更点が複数あります。そのため、まず労働時間の見直しや業務効率化を行うべきといえるでしょう。
これまでの業務で無駄や改善できそうなポイントを洗い出して業務効率化を進めていけば、労働時間の短縮も見込めます。業務に関連するツールの活用や業務を外部委託するのも、業務効率化するための方法です。
賃金・人材配置の見直し
正社員と非正規社員が在籍している企業は、両者に不当な格差がないかどうかをチェックしましょう。待遇差がなくなることで、非正規社員のモチベーションの差がなくなることが期待できます。ただし、待遇差をなくすために正社員の待遇を下げることは好ましくありません。
また、人材を適材適所に割り振りすると生産率向上が期待でき、業務効率化にもつなげられます。従業員一人ひとりの能力や適性に合った仕事ができるよう、人材配置を見直すのも1つの手段です。
従業員への施策の周知
社内で働き方改革関連法に対する施策が決まった際は、職場環境や待遇が変わる可能性もあるため、法改正に対応する理由やメリットなどを従業員に周知することが必要です。もし納得が得られない従業員がいた場合は、今後の施策の促進に影響を及ぼすことがあるので周知を徹底する、もしくは施策を見直しましょう。
まとめ
働き方が多様化している現在、従来の労働法では対応できないことが増えてきました。労働人口減少や労働者不足が問題となっている中で、働き方改革関連法によって労働法が改正されることで働き方や職場環境の改善が見込まれます。
しかし、実際の改善には法改正だけではなく企業の対応が必要です。労働者不足を解消して労働生産性を高めるためには、企業が法改正に適切に対応していくことが求められるでしょう。

