会社を設立して事業を展開する際は、取引や融資を受けるために法人口座を開設するのが一般的です。会社での取引では個人口座を使うことは問題ありませんが、法人口座を開設している方が事業を進める上でさまざまなメリットがあります。
そこで今回は、法人口座と個人口座の違いに加えて、口座開設方法や法人口座開設可能な金融機関などについて解説します。
法人口座と個人口座の違い

一般的に、金融機関で開設できる口座は法人口座と個人口座の2種類に分けられます。法人口座と個人口座を区別するのは、口座名義人です。口座名義人が株式会社や合同会社などの法人であれば法人口座、個人であれば個人口座となります。
法人口座は、会社を設立したら必ず開設する義務はありません。個人口座であっても、会社の取引口座として使用できるからです。法人名義で法人口座を開設する会社が多いのは、個人口座にはないメリットが得られるからです。その分、法人口座は開設までのハードルが高いことも押さえておきましょう。
法人口座のメリット
前述したように、会社の取引に使用する口座は個人口座でも基本的に問題ありません。しかし、法人口座を開設する会社が多い大きな理由は社会的信用度が上がるからでしょう。法人口座開設には後述する審査に通る必要があるため、法人口座を開設できているというだけでも金融機関からの信用を得ているを判断できます。そのため、取引先への信頼も上がるメリットがあります。
もし個人口座を会社の取引に使用していると、個人の取引と区別しづらくなってしまう点が問題です。法人口座があれば会社の取引と個人の取引を明確に区別できるため、お金の流れがわかりやすくなる点もメリットです。個人と法人のお金の取引や管理が区別できていないと、税務署にあらぬ疑いをかけられて税務調査の対象となる可能性もあります。そこで法人口座を開設してお金の流れをきちんと区別していれば、そのようなリスクも減らせるでしょう。
財務状況も把握しやすくなるため、会社を設立したのであれば法人口座を作っておく方が何かとメリットがあるといえます。
法人口座開設の審査が厳しい理由
金融機関で個人口座を作る際も審査は行われるものの、比較的スムーズに進むことがほとんどです。一方、法人口座の開設は個人口座よりも厳しく、口座開設までにも時間がかかります。
法人口座開設の審査が厳しい理由として挙げられるのは、マネーロンダリングの防止です。法人口座は不正利用されることが多いため、口座開設にあたっては事業目的などに問題がないか、本当に存在している法人なのかなどを金融機関が審査します。法人口座開設には必要な書類も多く審査基準も厳しいため、場合によっては審査に落ちて法人口座が作れないこともあり得ます。
法人口座を開設する方法

法人口座を開設するには、以下の3ステップを経ます。
・必要書類を準備する
・金融機関へ必要書類を提出
・金融機関での審査
法人口座の開設には、金融機関ごとに異なる必要書類を準備した上で提出し、その内容で審査を受けることとなります。基本は個人口座と大きな違いはありませんが、法人口座開設には準備するべき書類が多く、書類の内容次第で審査に通らないこともあるため、事前準備が重要です。
法人口座開設に必要な書類
法人口座を開設するには、主に以下の書類の準備が必要です。
・商業登記簿謄本
・認証済み定款(定款認証が必要ない合同会社などの場合は不要)
・会社印と印鑑証明書
・代表者印と印鑑証明書
・代表者の身分証明書
口座開設を希望する金融機関によって必要書類は異なり、上記に加えて会社の運営実態が把握できる書類などが必要となることもあります。必要書類が欠けてしまうと口座開設はできないため、金融機関のホームページなどで必要書類を確認し、揃えておきましょう。
法人口座を開設できる金融機関
法人口座は、多くの金融機関で開設が可能です。以下に挙げるようにほとんどの主要金融機関で開設できますが、それぞれの金融機関の種類によって特徴が異なります。会社にとってメリットがあり、利用しやすい金融機関を選びましょう。
都市銀行
全国展開する大規模な銀行です。主要都市に本店や支店があり、海外への振込にも対応しています。知名度が高く規模が大きい銀行だけあり法人口座開設の審査は厳しく、その分法人口座を開設していれば社会的信用度が高いといえるでしょう。大企業などとの取引では有利になるメリットがありますが、口座維持手数料が他の金融機関より高いなどのデメリットもあります。
地方銀行
地方銀行は、その銀行が所在する地域に強みがあります。地域密着型で展開している銀行が多く、地域内でのお金の流れをよく把握しています。そのため、事業を展開したり取引をしたりする地域にある地方銀行で法人口座を開設していれば、高い信頼性を得られます。都市銀行より親身に相談に乗ってもらえるメリットもある一方、金利が高めというデメリットもあります。
ネット銀行
ネット銀行とは、他の金融機関のように対面で対応する店舗を持たない、オンライン中心の銀行です。取引はもちろん、口座開設もオンラインで手続きが可能で、店舗がないため振込手数料が安い点、24時間365日振込や決済ができる点がメリットです。また、ネット銀行であれば口座維持手数料もかかりません。
現在ネット銀行は多数ありますが、GMOあおぞらネット銀行はセキュリティ対策万全で、24時間いつでも取引可能なネット銀行です。業界最安水準の手数料の安さで振込にかかるコストを抑えられるほか、1%キャッシュバックが受けられる法人カード、いつでも借りられるビジネスローンなど、便利なサービス満載です。
信用金庫
信用金庫とは、地域の人々が利用者または会員となり、地域の繁栄を図る協同組織金融機関です。地方銀行と同様に地域密着型で、都市銀行より口座を開設しやすいメリットがあります。貸し渋り・貸し剥がしも少ないですが、他の金融機関より金利が高く、従業員が300名以上または資本金9億以上になった場合は脱退しなければならない点がデメリットです。
ゆうちょ銀行
ゆうちょ銀行は元々郵便局で貯金を取り扱う部門が民間銀行になっているため、全国に支店が展開されている銀行です。顧客の地域にかかわらず振込してもらいやすい点や振込手数料の安さ、口座維持手数料無料などさまざまなメリットがあります。
デメリットは、預入額に上限が設けられている点です。1300万円を超える預入ができないため、大口取引には不向きです。
法人口座開設時の注意点
個人口座よりも開設のハードルが高い法人口座は、場合によっては審査に通らず口座を作れないことも考えられます。審査を通過するためには、主に以下の2点に注意しましょう。
事業目的を明確にする
法人口座開設の審査で重要とされているのが、事業目的です。定款に記された事業目的が曖昧、または事業内容が幅広すぎると不信感を持たれやすくなり、実在しない会社だと判断されることもあるため、審査に落ちてしまいます。
定款の事業目的や事業内容だけでは足らない場合は、会社資料や事業計画書なども資料として用意し、正当な事業を展開していること、明確な事業目的があることをアピールしましょう。
十分な資本金を設定する
現在、会社法上では資本金が1円でも会社の設立が可能です。しかし、法人口座を開設する際に資本金が1円、またはあまりにも少額である場合は信用力が落ちてしまい、ペーパーカンパニーと疑われる可能性が高くなり、審査に通ることは難しくなります。
法人口座を開設するにあたっての資本金の目安は100万円程度といわれます。また、金融機関によっては資本金の最低額が定められていることもあるので、開設前に資本金の最低額も必ずチェックしておくべきです。
まとめ
法人口座は開設までの審査のハードルが高いですが、対外的に高い信用性を得られる上、会社と個人のお金の流れを区別しやすくなるなどのメリットがあります。
法人口座を開設できる金融機関は多数あるので、今回ご紹介した情報を参考に法人口座を開設してみましょう。