スーパーでのお買物、インターネットでの検索、SNSなど、私たちの日常生活では会社や商品の「ロゴ」を見ない日はありません。もし自分が起業したとするなら、一目で自分の組織だと分かるようなロゴが欲しいと思うのではないでしょうか?
しかし、ロゴを作った経験がある人はほとんどいませんよね。今回はロゴを制作する前に知っておきたいことや相場などをご紹介します。
ロゴって何?
なぜ、ロゴは盛んに作られているのでしょうか。私たちはロゴを見ても「ああ、○○会社だね」というぐらいの印象でしょう。ですがロゴは人を惹き付ける不思議な力を持っているようにもみえます。ここではロゴの基本について学んで行きましょう。

自分を象徴するもの
起業や会社を立ち上げたらまっさきに作るのがロゴです。私たちは自然と「組織にはロゴが必要」だと感じています。ロゴは自分たちを目立たたせて、他の会社や製品・サービスとの違いをハッキリさせてくれる「シンボル」だからです。
そんなロゴの歴史は古く、紀元前の古代メソポタミアの円筒印章から始まると言われています。言葉としては、ギリシア語の「ロゴテュポス」に由来しています。元々は所有者を示すためのものでしたが、時代と共に「自分たちが何者か」を示すためのものに変化していきました。
私たちは自分を表現するためにシンボルを大切にしてきたと言えるでしょう。国であれば国旗、家であれば家紋や紋章、子どもは仲が良い仲間同士で「自分たちだけのマーク」を決めて遊ぶこともあります。
言葉を超える存在
世界には約196各国、約7,000もの言語があります。文字だけでは伝えられる地域が限られてしまいますよね。しかし、ロゴであれば効率よく自分たちの存在を伝えることができます。例えば、国際連合や赤十字のマークは世界中で知られています。
ロゴタイプとロゴマークの違い
①ロゴタイプ
ロゴの正式名称は「ロゴタイプ」で図案化・装飾化された文字のことをいいます。会社名や商品名など「文字」がベースになっているのが特徴です。GoogleやMicrosoftなど多くの会社が社名専用デザインを用意しています。
ロゴタイプのメリットは読むことが出来る点で、顧客に社名や商品名を覚えてもらうことができます。一方で、その言語を知らない地域では読むことはできません。例えば、英語の「Apple社」は日本人でも読むことが出来ますが「Türk Hava Yolları(トルコ航空)」は読めませんよね。
ロゴタイプは展開する地域ごとに適切なものが必要となります。
②ロゴマーク
「ロゴマーク」は和製英語で、会社や商品のイメージが図案化したものです。シンボルマークとも言え、一般的にロゴと言って想像されるのはロゴマークの方が多いでしょう。
ヤマト運輸といえば「黒猫」
マクドナルドといえば「M」
ロゴマークを見るだけで会社を思い出すことができるのではないでしょうか。ロゴマークは「顔」のような存在で、名前だけより相手に印象が残りやすいのが特徴です。ロゴタイプと違い、言語に左右されないメリットもあります。
ロゴはフリーランスや会社にとって不可欠
ロゴは自分の想いや活動内容を伝えることができるビジネスでは欠かせない存在です。しかし、「みんな作っているから」と漠然とした意識でロゴを作ってしまうと、後悔してしまうかもしれません。では、具体的にはどのようなメリットがあるのでしょうか?

ブランドになる
人はただの文字よりも図形などイメージのほうが記憶に残りやすく、感情にも働きかけやすいと言われています。ロゴをきっかけとして相手に社名や商品・サービスを思い出させることができるのです。
ロゴは見る回数が増えるほど脳に定着しイメージを形作ります。そして、一度信頼されるとロゴは安心の印にもなっていきます。
例えば、家電量販店で国内大手メーカーのロゴが入った製品を見れば「この会社の製品なら大丈夫だろう」と感じますが、見知らぬメーカーのロゴなら生産地や口コミなどをスマホで調べることもあります。
人によっては少し値段が高くても国内大手メーカーを選ぶこともあるでしょう。
高級時計やバッグもロゴが入っているかどうかで、他のブランドと差別化することができます。他のブランドとほとんど同じデザイン、材質、製造技術であっても販売価格は全く変わってしまいます。逆にいえば、ロゴがない製品は高い品質なのに素晴らしさに気づいて貰い難くなってしまいます。
気づかれやすくなる
さて、突然ですが日本で活躍している自動車メーカーの社名をローマ字で書いてみました。
TOYOTA HONDA NISSAN
日本で知られている大手有名企業なので文字だけでもイメージが湧きますが、文字だけで知らない社名が羅列されていれば暗号のように感じてしまうはず。
どこで区切ればいいかもわからないし、社名とも思えないかもしれません。
そこで会社や製品・サービスをロゴにすることで、「何かの会社かな?」と気づかせることができるのです。会社ごとの違いも鮮明になるでしょう。このようにロゴは競合他社との差別化し、顧客に気づいて貰いやすくする効果があるのです。
団結力を高める
ロゴは会社や事業のコンセプトや理念などがギュッと詰めこまれています。ロゴを作ることで外部へのブランドイメージ向上だけではなく、内部にも良い影響があります。ロゴという分かりやすいイメージは、従業員の団結力を高めてパフォーマンスや定着率を改善に繋がります。
フリーランスのように1人で活動する場合でもロゴはメリットがあります。どのような活動をしているか見えにくいこと面があるのを、ロゴがあることで「事業活動」をしていることが明確になるからです。インターネット上での営業が主の場合は、実態があることをアピールするような役割もあります。
汎用性が高い
ロゴはWEBサイトのアイコン、プレゼン資料、商品サンプル、封筒などあらゆる場所に使用することができます。ワンポイントとして使うだけでも相手に印象を残すことができます。さらに、基本となるロゴからアレンジをするなどバリエーションを増やすことが出来るのも魅力でしょう。
国ごとの特徴
事業を展開する地域や文化が広がるほどロゴは大切になってきます。ロゴは活動拠点となる国の影響を受ける特徴があります。ここでは代表的な3カ国のロゴの役割についてさらに見ていきましょう。

ロゴタイプとロゴマークは組み合わせOK
ロゴタイプには「名前」、ロゴマークには「顔」のような魅力があります。世界共通で、2つを組み合わせたデザインが多く存在しています。状況に応じて片方だけ、両方など使い分けができるので汎用性が高いことがメリットです。
例えば名刺などの社名部分にはロゴタイプを使用し、社章としてロゴマークを使うこともできます。製品の刻印にはロゴマークだけにして、デザイン性を損なわずブランド力を高めることもできます。
日本
日本の上位企業のロゴを見てみると、文字をベースにしたものが約半数と圧倒的にロゴタイプ寄りです。多くは英語なので海外展開も意識されていますが、「第一生命」「三井不動産」など漢字も少なくありません。ファミリーレストランのガストを展開する「すかいらーく」のロゴはひらがなです。
日本は創業年数が長い企業が多いことから文字をベースにしたものが多いのではないかと推測されます。いまでこそ日本語や英語を読める人は多いですが、識字率が低い時代には家紋のようにロゴマークが発展していました。
アメリカ
世界中に展開するアメリカ企業はロゴマークがメインであり、マクドナルド、Apple、ナイキ、ペプシコーラなどが代表です。アメリカは国内でも英語を読めない国民がいることから、ロゴマークに力を入れていると言われています。
元々はロゴタイプとロゴマークの組合せだったものから、ロゴタイプ部分が削除されているようなケースもあります。
中国
中国はロゴタイプとロゴマークを組合せたデザインが多く、14億人もの人口を誇る国内マーケットと海外市場の両方を狙ったものになっています。中国のIT企業では動物のマスコットキャラクターをロゴマークにしていることが多いのも特徴でもあります。
カンガルー、ペンギン、パンダ、タヌキ、猫などかわいらしいデフォルメされたデザインが豊富で、ITという機械的な分野でも人間味のあるイメージを出そうという狙いです。
ロゴは法律で守られる
ロゴを作るときには他人の著作権や商標権を侵さないようにしなければなりません。せっかく作ったロゴが使用できなくなるだけではなく、損害賠償請求されるリスクがあります。ここではロゴに関する法律の知識を学んでいきましょう。

ロゴは著作権の保護対象
著作権とは「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」を指します。具体的には音楽、小説、イラスト、プログラム、データベースなどで幅広い分野が対象です。
ロゴも著作権の保護対象とされており、他人が利用するためには著作者の許可を得て、報酬を支払う必要があります。自分が作ったロゴが既にあるロゴと似ていると著作権侵害となり訴えられる可能性があります。
しかし、最終的に判断するのは裁判所です。似ていたとしても著作権侵害になるわけではありません。一般的にロゴマークは図柄なのでオリジナルティが高く、著作権の保護対象となりやすい傾向があります。しかし、ロゴマークのデザインがどこにでもあるものであれば認められないこともあります。
さらに、文字がベースになるロゴタイプは著作権では保護されないことが多いので注意が必要です。文字は世界中の人が使う共有の文化的財産だからです。美術性が認められるものにまでデザインされていることが求められます。
著作権と商標権の違いとは?
著作権は創作物が生まれると当時に発生します。一方で商標権は特許庁に申請して認められる必要があります。著作権は著作者の死後70年まで、法人などの場合は公開から70年まで保護されます。それに対して、商標権は10年ごとに更新し続ければ永久に保護されます。
著作権ではロゴマークは保護されにくいですが、商標権を使えば他人の使用から保護することができます。原則として商標権は登録したのが早い人が保護されます。「自分のロゴマークなんて誰も興味ないだろう」と油断していると、急に知名度が上がった瞬間に他人に登録されて損害賠償請求されてしまう可能性もあります。
ロゴ制作の相場とは?
実際にロゴを作ろうと思っても相場や内訳がわからない人も多いですよね。ロゴは発注先や依頼内容によっても変化するので、闇雲に見積りをとっても適正な価格か分かりません。まずは予算を立てるためにも目安をご紹介します。

依頼先別のデザイン料目安
ロゴデザインの制作は誰に依頼するかによっても大きく変化します。
- 知人や友人 1~5万円
- 個人事業主 2~5万円
- デザイン会社 5~20万円
- 有名デザイン会社 20~50万円
個人の方が安く、企業に依頼すると高くなります。事務所賃料、福利厚生費、各種管理費、広告宣伝費など企業規模が大きいほど費用が膨らみやすいからです。
また、ロゴは企業のイメージ戦略そのものにも直結します。コンサルティング要素も強くなるので、高単価になりやすいと言えます。
知人や友人に依頼する場合
知人や友人に依頼する方法はロゴ作成を気軽に依頼できるというメリットがあります。業者とのやりとりが苦手という人にもオススメです。美術大学出身・在学やデザイン会社に勤めている友人が居れば、品質も期待することができるでしょう。
価格を抑えられる可能性もあります。しかし「友達だから安くしてよ」という態度を嫌うデザイナーは少なくありません。安い値段でも制作してくれるのはあくまで知人や友人からの好意にすぎません。要求するのは避けましょう。
個人事業主やフリーランスに依頼する
2万円~5万円で制作が可能ですが、デザイナーによっては10万円ということもあります。デザイン会社などを経て独立していることが多いため、品質と価格のバランスもよいでしょう。
一方で、デザイン会社と違いデザイナーも1人なので、作風のマッチングをしっかりする必要があります。サンプルや過去の実績を見て、自分が作りたいロゴに近い人を探すのがコツです。
今ではクラウドソーシングやスキルシェアを通して、個人事業主やフリーランスのデザイナーに簡単に出会うことができます。
デザイン会社に依頼する
一般的なデザイン会社では5~20万円、有名デザイン会社だと20~50万円です。個人事業主やフリーランスに依頼するより高額ですが、デザイン内容によっては3~5万円でできる場合もあります。
デザイナー、ディレクター、イラストレーターなど職種ごとに所属しているため、細かい要望に応えてくれるでしょう。担当との相性が悪ければ変更してもらえる可能性もあります。法人なので「突然連絡がつかなくなった」というリスクも低いメリットがあります。
ロゴ制作費用の内訳とは?
ロゴ費用の見積りを依頼するとさまざまな内訳が記載されています。総額で見ると高く見えても、しっかりと内容を見ると実は安価ということもあります。また、自分が希望しているサービスが入っているかどうかもチェックできます。

作業料
デザインを作成するための直接の費用でデザイナーの人件費にあたります。社内の基準となる時給単価をベースに算出する会社もあれば、従業員の平均年収と労働時間を元にする会社もあります。
デザイン料
デザインを生み出す行為全般にかかる費用で、作業料とは別のものです。創作物であるデザインは実作業時間よりも、デザインを考案する時間の方が長いこともあります。また、今までの経験や知識、培ってきたセンスのように時間計算しにくい部分がデザイン料には含まれます。
デザイナーや会社によって差が出やすい部分とも言えます。ブランディングに関わる重要なロゴであれば高額でもメリットがありますが、影響が少なければ抑えてもよいかもしれません。また、ロゴタイプとロゴマークで別々の見積りとなっている場合もあります。
付加価値料
ロゴが使われることで得られるだろう効果によって設定されるのが付加価値料です。イベントの重要性、イベントの規模、デザイナーの知名度などによって大きく差が生じます。オリンピックに使用されるロゴと地元の夏祭りイベントのロゴであれば、前者のほうが遥かに高額の料金が設定されるでしょう。
提案数
最初に提案するラフのロゴの数のことで、数が多いほど費用は高くなってしまいます。枚数は1枚から10枚などさまざまで、オプションで増やすことも可能です。数が多ければ多いほどメリットがありそうですが、最後は1つしか選ばれない点に注意しましょう。選択肢が多いほど本来の趣旨から離れてしまうこともあります。
修正数
仮完成したロゴに無料で修正できる回数です。3回程度の修正であれば無料の場合や、追加料金が発生する場合もあります。
最初に提示されたデザインがもっとも完成度が高いことも少なくありません。しかし、デザインの素人である依頼者は「ちょっと違うような気がする」と安易な気持ちで微調整を依頼し、完成度を下げる修正を繰り返し続けることもあります。当然ながら修正回数が多いほど出費が増えてしまうので、微調整ぐらいに留めるのがよいかもしれません。
経費
ロゴを作成するのに掛かる交通費や通信費のことです。ソフト利用料など雑費的な項目として設定されています。
商標登録費用
ロゴの特許庁への商標登録を代行して貰える場合もあります。登録出願料、設定登録料など数十万円の費用が発生します。費用はかかりますが他人に登録されてしまい利用料を請求されたり、パクリ商品を作られてブランド力が落ちたりするリスクがあります。トラブルに発展してから対処すると膨大な金額がかかるため対策も必要です。
ロゴを作るために大切なこと
自分たちの顔にもなるロゴ。制作するには自分の頭の中にある想いを形にしなければなりません。しかし、依頼する前にしっかりと準備をしておかないと思ったようなロゴが作れなくなってしまいます。ここではロゴを依頼する前に考えておくべきことを確認しましょう。

イメージを言葉にする
ロゴには独創性だけではなくメッセージ性も求められます。まずは、自分が大切にしたい価値観や情熱を明確にしなければなりません。デザイナーなどに正確に伝えるためには具体的であることも求められます。
「自然環境を大切にしたい」と言っても、木々を連想して「緑」を選ぶデザイナーもいれば、空や海を連想して「青」を選ぶデザイナーもいます。さらに、活発的なのか、落ち着いたイメージなのかでも図案は変わっていきます。
ペルソナを考える
ロゴをブランド化するためにも「どんな人に見てもらいたいか」を考えるとよいでしょう。効果的な方法はペルソナを設定することです。ペルソナは商品・サービスを利用する典型的な人のことで、年齢・性別・職業・年収・趣味・休日の過ごし方などリアルな人物像を描いたものです。
リアルに相手を想定することでデザイナーなど関係する人たちとの認識のズレを少なくすることができます。10代向けと70代向けでは求められるデザインは変わります。また、同じ30代女性でも年収300万円と1000万円、子どもの有無では行動は異なるでしょう。
自分が大切にしたい価値観や情熱も重要ですが、それが濃すぎると誰にもメッセージが伝わらないということにもなりかねません。
使用する媒体も考慮する
ロゴを主にどんな場面で使用するのかも検討しておきましょう。
さまざまな条件で印字したときに見やすいかは意外と難しい問題です。
- カタログや営業資料などの紙媒体
- 名刺やボールペンなど小物
- 製品パッケージ
- WEBサイトなどインターネットコンテンツ
媒体によっては不向きなデザインもあるので注意が必要です。
使用イメージまで想定するとよいでしょう。
将来性も織り込む
一度使い始めたロゴは簡単に変えることはできません。せっかく長年かけて築いたイメージが低下してしまう可能性があるからです。しかし、事業規模が大きくなったり、ターゲットにしているマーケットが変わったりすると、ロゴが適切ではなくなってしまうこともあります。
ときにはロゴを変更する必要もありますが、なるべくロゴを変えないで済むようなデザインにしましょう。
まとめ
ロゴは自分の事業を表す顏となる大切なデザインです。ブランドとして価値を高めることができたり、顧客に気付いてもらえたりするだけでなく、社内での団結力をも引き出してくれるでしょう。
大切なロゴの制作を依頼する時は、予算や作風と相談をしながら個人に頼むか業者に頼むかを考えます。
いずれにしても、ロゴのイメージを具体化し、ターゲットを明確にしてデザイナーに伝えることが大切なので、この記事を参考にしっかりと準備をして臨みましょう。
