「承る」という表現は、ビジネスのほかにもショッピングなどプライベートな場面でも聞く機会が多いものです。しかし、どのような意味を持つのかよくわからないまま使っていることも多いのではないでしょうか?「承る」が持つ意味は複数あるので、使い方によっては伝えたい内容が誤って伝わってしまうこともあるため、注意して使いたいところです。
そこで今回は、「承る」という表現が持つ意味、言い換え表現や使用上の注意点に加えて、メールなどでも使える例文をご紹介します。

4つの意味を持つ「承る」

「承る(うけたまわる)」とは、目上の人からの命令などを「受け」に「いただく」という意味を持つ「賜る」を加えた「受け賜る」という言葉が語源といわれ、相手を敬う意味で用いられる謙譲語です。
そして、「承る」という表現には4つの意味があります。
・命令や依頼などを受ける
・聞く
・伝え聞く
・引き受ける
「承る」と「受け賜る」の意味は違う
「承る」の語源となった「受け賜る」は「もらう」という意味があり、元々は目に見えるものの受け渡しに使われていました。一方、「承る」は命令や依頼などを受ける際に使われます。目に見えるものを受け渡されたときは「受け賜る」、目に見えない言葉や命令、依頼などを受けたときに「承る」を使います。つまり、「承る」と「受け賜る」には受け取ったものの実体があるかないかという大きな違いがあります。
ところが、「賜る」という表現が強い意味を持つので、実際は「受け賜る」という表現を使うシーンは限られています。そのため、「賜る」は単独で使われることが多いのが現状です。
雛形にも使える「承る」の例文

前述の通り、「承る」という表現には4種類の意味があります。それぞれの意味を把握していれば、メールやビジネス文書などでも上手に活用できます。また、意味合いによっては口頭で、電話応対などのビジネス会話でも使える表現です。
そこで「承る」を使用する際の例文を、4種類の意味ごとにご紹介します。
命令や依頼などを受ける場合
・この度、大役を承りました○○と申します。
・いただいたご要望、謹んで承ります。
目上の人からの命令や依頼を受けた際の返答として「承る」を用いる場合は、このように使用します。「謹んでお受けする」という意味で、受けた申し出を承諾したという意味に加えてお礼や感謝の意味も含みます。
「聞く」という意味で使う場合
・貴重なご意見、確かに承りました。
・お話を承りました。
「謹んで聞く」「拝聴する」という意味で使用します。「聞く」という意味なので内容を聞いてはいますが、この場合は上記の命令や依頼を受ける場合で使用するときのように、その場で承諾したという意味は含みません。そのため、「確かにお話や意見などを聞きましたが、一旦持ち帰って保留する」という場合にも使用可能です。
「伝え聞く」という意味で使う場合
・「承るところによりますと、担当の○○は本日不在とのことです。
伝え聞くという意味で「承る」をを使う機会はあまり多くはないかもしれませんが、伝え聞いた内容を相手に伝える際には上記のように「承るところによりますと」という表現を使うのが一般的です。主に、目上の人の様子などについて伝え聞いたことを第三者に伝えるときに使用します。
引き受けるときに使う場合
・ご予約を確かに承りました。
・あいにく○○は席をはずしておりますので、私でよろしければご用件を承ります。
上記の例文は、目上の相手、またはお客様からの要望や注文などを引き受けたことを伝える意味で使用しています。2つ目の例文はメールなどの文書ではなく、電話対応などのビジネス会話で活用できる例文です。ただし、この使い方ではお礼や感謝の意味も含む「受ける」という意味で使用するときとは異なり、お礼や感謝の意味は含みません。
「承る」の言い換え表現

「承る」という表現を何度も繰り返してしまうときなどは、言い換え表現を使って別の表現に置き換えてみましょう。4種類の意味として使える「承る」という表現は、それぞれの意味によって言い換え表現も異なります。「伝え聞く」のみは、言い換え表現に適した表現がないため、その他の3種類の言い換え表現をご紹介します。
命令や依頼を受けた際の言い換え表現
・謹んでお受けいたします。
・承諾させていただきます。
いずれも、命令や依頼などを聞き入れ、その内容を受け入れる意味を持ちます。なお、「承諾させていただきます」は「承諾する」の謙譲語です。
もっと一般的な言い回しにしたい場合は、
・かしこまりました。
・承知しました。
・了解しました。
・了承しました。
などの表現でも言い換えできます。
「聞く」として使う際の言い換え表現
・拝聴しました。
・伺いました。
「拝聴」とは、「相手の言うことを謹んで聞く」という意味を持つ、「聞く」の謙譲語です。この1語のみでへりくだった意味を持つので、「拝聴させていただく」と書くと二重敬語になってしまうので注意しましょう。
「伺いました」は尋ねる、訪問するなどの意味もありますが、相手の話を聞いたという意味でも用いられるので、「承りました」の言い換えとして使えるというわけです。
「引き受ける」として使う際の言い換え表現
・かしこまりました
承諾するという意味でも使える「かしこまりました」ですが、引き受けるという意味での「承る」の代わりとしても使えます。
「承る」を使う際の注意点

「承る」は4種類の意味があるので、場合によっては使い方が難しいと感じてしまうかもしれません。この表現は謙譲語なので、使う相手や使い方、使用シーンがある程度限られます。「承る」を使うには、以下で解説する2つの注意点を押さえておきましょう。
身内に使用しない
「承る」という表現は、取引先やお客様、目上の人に使うのが基本です。目上の人であっても、上司や社長など、同じ会社の人に使っても誤りではないものの、別の表現の方が好ましいとされます。
そのため、「承る」は基本的に社外の人に使い、身内には使用しないと覚えておきましょう。
使用シーンと使い方をよく見極める
「承る」という表現には4種類の意味があるので、使うシーンや使い方によっては誤った意味で伝わるかもしれません。特に、この表現には「承諾する」「対応する」という意味合いが含まれている点に注意して使うべきです。
例えば、顧客に意見やリクエストをもらった時に、その内容をしっかりと聞きましたという意味で「承りました」と答えたとします。すると、相手はその意見を踏まえてリクエストに対応してもらえると理解してしまい、齟齬が生じる可能性があります。
このような食い違いを防ぐためには、複数の意味で取れる場面には使用せず、すでにご紹介した言い換え表現を伝えたい内容に合わせて使うのが無難でしょう。
まとめ
さまざまな場で聞くことが多い「承る」には4種類もの意味があり、使い方によっては伝えたい内容が誤って伝わってしまう可能性もある表現です。ビジネスで使う機会も多い表現なので、マスターしておけばビジネススキルアップにつながるでしょう。
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「承る」は、ビジネスでもよく使われます。正しい意味と使い方をマスターして、仕事やビジネスをスムーズに進めましょう。