ビジネスシーンでは正しい言葉を使うことが大切です。細かいことをあまり気にしない方もいますが、ちょっとした言い間違いがきっかけで信用を失ってしまうこともあります。
そこで今回は、仕事相手とのやり取りでよく使う「ご自愛ください」という言葉について解説します。
「ご自愛ください」の正しい意味とは
「ご自愛ください」には、「お体に気を付けてください」「ご自身を大切にされてください」といった意味があります。
相手の身体的・心理的健康を気遣う挨拶です。
また、自愛とは下記のような意味があります。
- 自分を大切にすること。自分の健康状態に気をつけること。
- 自分の言行を慎むこと。自重。
- 自分の利益を大事にすること。利己。
- 倫理学で、自己保存の本能に基づいて、自己の幸福を求める自然的性向。
- 物を大事にすること。珍重すること。
- してゐたりけるを
引用:goo辞書
「ご自愛ください」は上記の中でも、1の「自分を大切にすること。自分の健康状態に気をつけること」の意味で使います。よくある間違いが、「寒い日が続きますので、どうぞお体にはご自愛ください」といった使い方です。
「自愛」という言葉自体に体を気遣うという意味が含まれているので、「お体」という言葉を入れると重複になってしまいます。
「寒い日が続きますので、どうぞご自愛ください」 が正解です。
「ご自愛ください」を使った例文

「ご自愛ください」という言葉をどう使えばよいのか、具体的な例文をご紹介します。
ビジネスメールの例文
ビジネスメールでは、相手の健康を気遣う表現として「ご自愛ください」がよく用いられます。特に、取引先やお世話になっている方に対して、丁寧かつフォーマルな印象を与える表現です。
- いつもお世話になっております。季節の変わり目でございますので、どうぞご自愛くださいませ。
- これからも変わらぬご支援を賜りたく、よろしくお願い申し上げます。お忙しい日々かと存じますが、どうかご自愛のうえお過ごしください。
- 先日のご案内に心より感謝申し上げます。今後ともよろしくお願い申し上げます。どうぞご自愛くださいませ。
ビジネスメールの結びの言葉では、「今後ともよろしくお願いいたします」がよく使われますが、「ご自愛ください」を使うことでより良い印象を与えられます。「ください」という表現が高圧的と感じる場合は、文末に「ませ」を加えて「ご自愛くださいませ」を使うのがおすすめです。
暑中見舞い・残暑見舞いの例文
暑中見舞いや残暑見舞いは、相手の健康を気遣う季節の挨拶として使われます。「ご自愛ください」は、暑さが厳しい時期に相手の体調を気遣う意味で非常に適切です。
暑中見舞い
- 暑中お見舞い申し上げます。厳しい暑さが続いておりますが、どうぞご自愛くださいませ。
- 梅雨明け後も暑さが続いております。お体に気をつけて、どうぞご自愛ください。
残暑見舞い
- 残暑お見舞い申し上げます。厳しい残暑が続いておりますが、どうぞご自愛のうえお過ごしください。
- 残暑厳しい折、皆様のご健康を心よりお祈り申し上げます。どうぞご自愛くださいませ。
夏バテなどで体調を崩さないように気遣う気持ちを、「ご自愛ください」を通して伝えられます。
寒中見舞いの例文
寒中見舞いは、寒さが厳しい時期に相手の健康を気遣う挨拶状として使われます。「ご自愛ください」は、特に冬の厳しい寒さを背景に、相手の体調を気遣うために非常に適した表現です。
- 寒中お見舞い申し上げます。厳しい寒さが続いておりますが、どうぞご自愛のうえお過ごしくださいませ。
- 寒中お見舞い申し上げます。厳寒の折、皆様のご健康をお祈り申し上げます。どうかご自愛のうえ、引き続きご活躍されますようお祈り申し上げます。
- 寒さが一段と厳しくなってまいりましたが、どうかお体にお気をつけてお過ごしください。ご自愛くださいませ。
「ご自愛ください」は、特定の季節に限定される表現ではありません。相手の健康や幸福を願う際に、年間を通じて使うことができます。
年賀状での使用例
年賀状では新年の挨拶とともに、相手の一年間の健康を願う気持ちを表現するために「ご自愛ください」を使うことができます。
- 謹んで新年のお慶びを申し上げます。本年も変わらぬご愛顧を賜りますようお願い申し上げます。どうぞご自愛のうえ、素晴らしい一年をお過ごしください。
- 新春のお慶びを申し上げます。今年もご健勝とご多幸をお祈り申し上げます。どうぞご自愛くださいませ。
- 謹賀新年。旧年中は大変お世話になり、心より感謝申し上げます。どうか本年もご自愛いただき、健やかにお過ごしください。
フォーマルな印象を保ちつつ、新年の挨拶にふさわしい表現です。
「ご自愛ください」の言い換え表現

「ご自愛ください」以外にも、相手の体調を気遣う言葉があります。「ご自愛ください」の言い換え表現は、以下の通りです。
「お大事になさってください」
「お大事に」という表現は、特に相手がすでに体調を崩している場合や、病気・けがをしている場合に使われます。相手に対して、早い回復を願う気持ちを表すフレーズです。「なさってください」は、より丁寧な表現にしたものです。
- 風邪を引かれたとのこと、お大事になさってください。
- 先日のけがが早く良くなりますように、お大事になさってください。
「ご自愛ください」は、すでに体調を崩している方に使うのは不適切です。そのようなときに、代わりに「お大事になさってください」を使うことができます。
「ご健康をお祈り申し上げます」
「ご健康をお祈り申し上げます」は、相手の健康を長く願う際に使えるフォーマルな表現です。主にビジネスシーンや礼状、感謝状などの堅い文章で用いられることが多いです。
- 貴社ますますのご発展と皆様のご健康をお祈り申し上げます。
- 年末のご挨拶として、皆様のご健康をお祈り申し上げます。
相手に直接会う場面ではあまり使われませんが、丁寧な書き言葉として適しています。
「お体にお気をつけください」
「お体にお気をつけください」は、日常の会話やビジネスでよく使われる相手の体調を気遣う言葉です。「ご自愛ください」と似た意味合いを持ち、健康や体調を気遣う気持ちを伝えられます。
- 最近忙しいとお聞きしましたので、どうぞお体にお気をつけください。
- 季節の変わり目なので、お体にお気をつけてお過ごしください。
相手が病気やけがをしている時に限らず、普段から健康に気をつけてもらいたいという願いが込められています。
「お体をお労りください」
「お体をお労りください」は、相手が多忙であるもしくは疲れていると推測される場合に使える表現です。相手に対して無理をせず、体を労わって休んでもらいたいという気持ちを伝えられます。
- お忙しい毎日かと思いますが、どうかお体をお労りください。
- 連日のご活躍、さぞお疲れかと存じます。どうぞお体をお労りください。
相手が健康であっても、休息の必要性を伝えたいときに使うとよいでしょう。
「ご自愛ください」を使うときの注意点
「ご自愛ください」という言葉を使わない方がよいシーンもあります。誤って使うと失礼に感じられてしまうこともあるため、下記の点には注意しましょう。
年長者にはより丁寧に表現する
「ご自愛ください」は、「~ください」という言い方がきついと思われることもあります。そのため、上司や取引先、先生などに対して使うときは、より丁寧にしましょう。「どうぞご自愛くださいませ」「ご自愛お祈り申し上げます」といった表現がおすすめです。
病気を患っている相手には使わない
「ご自愛ください」は、すでに健康な状態にある人に言う言葉です。体調が悪い方や病気を患っている方には、使わないようにしましょう。
代わりに、「一日でも早くご快方に向かうこと、お祈りしております」「少しでも早くお元気になられ、また一緒にお食事できることを楽しみにしています」など伝えてください。
繰り返し使わない
「ご自愛ください」という文章は基本的に、一つのメールや手紙の中で一度しか使いません。何度も使うと稚拙な印象を与えてしまうので、気を付けてください。
代わりに「お体を大切にしてください」「お風邪などお召しにならないようお気を付けください」といった表現ができます。
「お体」という言葉と一緒に使わない
「ご自愛ください」の「自」には、自分の体という意味が含まれています。「お体」という言葉を付け加えると二重表現となるため、使わないようにしましょう。「ご自愛」の前に言葉を添えたい場合は、「何卒ご自愛ください」「どうかご自愛ください」「くれぐれもご自愛ください」などが適切です。
「慈愛」と混同しないようにする
「自愛」と「慈愛」は読み方は同じでも、意味が全く異なります。慈愛とは、深い愛情を指す言葉です。「ご慈愛ください」は「深い愛情を与えてください」という意味になるため、相手を困惑させ兼ねません。それぞれの意味の違いを理解し、状況に応じて適切な言葉を使用することが大切です。
英語での表現に気を付ける
海外の取引先など、英語で「ご自愛ください」と言いたい場面もあるかもしれません。そういったときは、下記のようなフレーズで、相手の健康を気遣うことができます。
- Please take care of yourself
- Take care
- Take care of your health
ただし、あまり親しい関係ではない相手に英文のビジネスメールを送る場合は、「Thank you」「Best regards」「Sincerely」というシンプルな結びの言葉を使うようにしましょう。
「ご自愛ください」と言われたときの返し方
ビジネスシーンでは自分が言うのではなく、相手に「ご自愛ください」と言われる場合もあります。自分が「ご自愛ください」と言われたときは、体調を気遣ってくれたことへの感謝と相手の健康を祈る気持ちを表現しましょう。具体的には、以下のような表現が適しています。
- ご丁寧なお気遣いを賜り、誠にありがとうございます。〇〇様も、どうかお体にはご自愛のうえお過ごしください。
- ご配慮に深く感謝申し上げます。〇〇様もどうか健康には十分ご留意されますよう、心よりお祈りいたします。
- 温かいお心遣いに感謝いたします。〇〇様も、どうぞお体を無理なさらずご自愛ください。
「ご自愛ください」をそのまま返すと、相手に悪い印象を与えてしまう可能性があるため避けた方が無難です。
「ご自愛ください」で相手の健康を気遣う気持ちを伝えよう

「ご自愛ください」は、相手の健康を気遣う際に使われる非常に丁寧な表現です。特に季節の変わり目や寒暖差の激しい時期に用いられ、ビジネスやプライベートの場面でも幅広く活用できます。この言葉を使うことで、相手に対する思いやりや気遣いの気持ちを丁寧に伝えられます。
例えば、ビジネスメールや年賀状、暑中見舞い、寒中見舞いなどです。さまざまな書面で相手の健康を祈る文面に加えると、より心のこもった印象を与えます。
ぜひ本記事を参考にして、「ご自愛ください」を使い、相手との良好な関係を築きましょう。