メールなどで相手の体調を気遣う言葉として、「お大事に」という表現は日常的によく使われています。しかし、ビジネスシーンでの使い方はやや異なります。目上の人や取引先の相手に体調を気遣う際に「お大事に」という表現を使う際は、使用方法に注意が必要です。
メールで体調を気遣う表現にはさまざまなものがあり、以下の記事でも詳しく取り上げています。
今回は、「お大事に」の意味や目上の人、取引先の相手などに使う際の注意点、言い換え表現に加えて、自分が「お大事に」と気遣われた際の返答方法について解説します。
「お大事に」とはどういう意味?

「お大事に」は日常会話でも聞く機会が多い言葉なので、ビジネスシーン以外でも聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。
「お大事に」とは、ケガや病気の人に対して体調を気遣い、早く回復することを願ういたわりの気持ちを伝えるときに使う言葉です。相手を気遣う気持ちを示すので、比較的どのようなシーンでも使えますが、使う際にはいくつか注意するべきポイントがあります。
目上の人に「お大事に」は使える?
広いシーンで使える「お大事に」という言葉ですが、上司など目上の人に対して使える敬語かというと、実際にはそのまま使えるわけではありません。
「お大事に」は、正確には「お大事になさってください」という敬語表現を省略した言い回しです。プライベートで身近な人に対して「お大事に」のみを使うことは問題ありませんが、口語的な表現なので目上の人に対して省略した敬語表現となる「お大事に」のみを使うのはふさわしくありません。また、「お大事にしてください」も「してください」に敬意が含まれていないので、目上の人に使うことは避けましょう。
目上の人に対しては、正しい敬語表現である「お大事になさってください」を省略せずに使うべきです。より丁寧な表現にするには、「どうぞ」や「くれぐれも」、「十分に」などを最初に付け加えるといいでしょう。
「お大事に」を使う際に注意するべきポイント
上記のように、「お大事に」は「お大事になさってください」を省略しているので、短く「お大事に」を使うのは家族や親しい人、身近な人にとどめておくべきです。丁寧な言い回しにしたいときは、前述した「お大事になさってください」を使えば失礼なく気遣いの気持ちを伝えられるでしょう。
しかし身近な人であっても、しばらく会っていない人に対して「お大事に」のみを使うのはそっけない印象を与えてしまいかねません。そのような場合は、「お大事にね」などと語尾を工夫して声をかけるのがおすすめです。
その他の体調を気遣う敬語表現

「お大事になさってください」以外にも、相手の体調を気遣う敬語表現はいくつかあります。言い換え表現としても使えるので、同じ言い回しばかりを繰り返すことを避けるために別の表現を覚えておくといいでしょう。
・ご自愛ください
「ご自愛ください」とは、相手の健康や体を大切にするよう願う意味を込めて使う言い回しです。「どうぞご自愛ください」や季節に合わせて「酷暑の折、どうぞご自愛ください」のように、ビジネスメールの最後によく使われます。
「ご自愛」という言葉には「体を大切にする」という意味が含まれているので、「お体をご自愛ください」とすると重複表現になるので使う際は注意しましょう。
・おいといください
「おいといください」は日常的に使うことがあまりないので、聞き慣れない方が多いかもしれません。
「おいとい」とは、自分の安全や健康を「大事にする」「いたわる」という意味を持つ「厭う(いとう)」に、敬意を示す接頭辞の「お」を付けた言い回しです。漢字の「厭」にはネガティブな意味もあること、漢字表記は堅いイメージがあることから、柔らかい印象にするためにひらがなで表記するのが一般的で、主に書き言葉で使用します。
「厭う」のみで「大事にする」という意味があるので、体を大事にしてくださいという意味で「お体をおいといください」などと使えます。
・養生なさってください
ケガや病気をしている人に対して、良い健康状態に回復するためにゆっくり体を休めてくださいという気持ちを伝える言い回しです。「お大事になさってください」はどちらかというと軽いケガやすぐに治る病気の人に使用しますが、「養生なさってください」はそれよりも治療にある程度時間がかかる人へ使います。
・お労りください
「大切にする」という意味の「労る(いたわる)」に、接頭辞の「お」と加えた言い回しです。体調や健康を大切にしてください、という意味で使われ、体や健康を大切にしながら回復に努めてくださいという意味を持ちます。「ご自愛ください」と同様、メールの最後に使われることが多い言い回しです。
「お大事になさってください」への返答方法

寒暖差が激しい時期の挨拶と結びの言葉は?メールで使える例文と注意点
ここまで、相手に対して体調を気遣う際の表現をご紹介してきました、もし自分がケガをしたり体調を崩してしまったりして「お大事になさってください」と目上の人や取引先の顧客などから気遣いの気持ちを伝えられた場合、どのように返答すればいいのでしょうか。例文とともにご紹介します。
気遣いに対する返答
「お大事になさってください」に対して答えるには、まず感謝の気持ちを伝えましょう。基本的な返答には、以下のような文章が使えます。
・お心遣いありがとうございます。
・お心遣いに感謝いたします。
・お気遣いいただきありがとうございます。
これらの言葉の後に、「ご心配をおかけして申し訳ございません」のようにお詫びの気持ちを付け加えます。ケガや病気が原因で仕事に影響が出た場合は、「ご迷惑をおかけして申し訳ございません」「ご迷惑をおかけします」などと続けましょう。相手を気遣う気持ちを示すために、「○○(相手)様もお元気で過ごされますようお祈り申し上げます」と付け加える方法もあります。
できるだけ早い復帰する気持ちを示す際は、「しっかりと休養を取って業務に復帰したいと思います」と伝えてもいいでしょう。
復帰が決まっている場合の返答
治療にある程度時間がかかっている間に目上の人や顧客などから気遣う言葉をもらい、その時点で復帰時期が決まっている場合は、「お心遣いありがとうございます」などの気遣いに対する感謝とともに、以下のようなフレーズを追加して復帰する時期を伝える返答方法があります。
・○月○日に復帰する予定です。復帰までの業務は△△に引き継いでおります。
不在の間に業務の引き継ぎなどを行っていた場合は、復帰までの間の引き継ぎに関して上記のように触れておくと業務が滞ることなく進められるでしょう。
まとめ
ビジネスメールは業務上必要な連絡だけではなく、場合によっては相手への気遣いの気持ちを伝える機会が出てくるものです。体調不良を起こしやすい季節の変わり目など寒暖差が激しい時期に体調を気遣う気持ちを伝えるには、以下の記事でご紹介している挨拶や結びの言葉を覚えておくのも便利です。
メールは直接相手と顔を合わせることなくやり取りができますが、書く文章によってはそっけない印象を与えてしまいます。そこで体調を気遣う言葉を1つ使うだけで、相手とのコミュニケーションがスムーズになることが期待できます。今回ご紹介した「お大事に」の使い方をマスターして、目上の人とメールで上手にコミュニケーションを取ってみましょう。